大阪地方裁判所 昭和36年(ワ)2228号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔争点〕原告は、訴外Aが被告よりその所有にかかる本件土地を賃借して右地上に建築した本件家屋をAより買い受け、それと同時に、右敷地たる本件土地を被告より建物所有の目的で賃借していたところ、昭和三六年五月二五日被告は、訴外Bに対し本件土地を売却したにかかわらず、その際原告との間の右賃貸借をBに承継させる手段をとらなかつたため、原告の賃貸借は、Bに対抗できなくなつてしまつた。そこで原告は、被告が賃貸借契約上負担していた使用収益をさせる債務が履行不能となつたことを理由に、被告に対し、損害賠償として金七六六、五〇〇円を請求した。
ところで本件においては、原告は本件家屋をAより買い受けたのに、その旨の登記を得ていなかつたので、Aに対する滞納処分として本件家屋が差し押えられ、昭和三五年四月二七日公売に付された結果、訴外Cが同年五月四日買受代金を支払つて本件家屋の所有権を取得し、その旨の移転登記も取得したという事実がある。
そこで、被告は抗弁として、原告の賃借権は本件家屋の所有を目的とするものであつたところ、右のとおりCがこれの所有権を確定的に取得し、その反面原告はその所有権を失うこととなつた結果、その時に、右賃借権も消滅したというべきであるから、被告には原告主張のような債務不履行はないと主張して争つた。
本判決は、次のように判示して、原告の請求を斥けている。
〔判決理由〕一般に賃借地上にある建物は敷地の賃借権を伴つて始めてその存立を保ちうるものであり、敷地の賃借権は建物所有権に付随しこれと経済的に一体となつて一つの財産的価値を形成しているものであり建物の所有権に従たる権利であるということができる、従つて右建物が第三者に売渡されたり滞納処分によつて公売に付され第三者によつて買受けられた場合は右建物が取毀しを前提とする価額で買受けられた等特段の事情がないかぎり土地所有者に対する対抗力はさておき右建物の所有に必要な敷地の賃借権も買受人に移転するものであり、また右建物につき二重譲渡のあつたときはその敷地の賃借権は前記のとおり建物所有権に従たる権利として特段の事情のない限り建物の所有権の帰属とその運命を共にするものである、すなわち賃借敷地上の建物が第三者に売渡されたに拘らず買主がその旨の登記を経由していないため右売買による所有権取得を他の第三者に対抗しえない場合他の第三者が右建物を売主から二重に買受けてその旨の所有権移転登記を経由したときはその所有権は右第三者に排他的に帰属するに至りこれと共にその敷地の賃借権も右第三者に帰属するに至るものである。しかるところ、本件にあつては前記のとおり本件建物は山本から原告へ譲渡されこれに伴つて本件宅地の賃借権も山本から原告へ譲渡せられたに拘らず右建物の所有権移転につきその旨の登記を経由しなかつたため右建物につき山本に対して公売処分がなされ、その結果竹内が昭和三五年五月四日その所有権を取得しその旨の登記を経由したものであるからその敷地である本件宅地に対する賃借権もこれと共に竹内が取得し同時に原告は本件建物の所有権と共に取得した右賃借権を失つたものというべきである。従つて原告が昭和三六年五月二五日当時本件宅地に対し右賃借権を有していたことを前提とする原告の本訴請求は爾余の点について判断するまでもなく失当である。(中原恒雄)